ふたたび
弥生のこと
1日
3月というのはつくづく寒い月だと思う。
ついそこまで、手を伸ばせばつかめる距離まできている春が、思わせぶりにちらちらと顔をのぞかせながら、“まだよ、まだまだ”とはやる心を抑えつけているような気がする。
だから今頃になって、コートを買ってしまったりと、こちらの気分も揺れ動いている。
このところの出費加重に、私の感覚がいささか麻痺しているようで、このコートも含めて我ながら衝動買いがしばしば起きている。
2週間ほど前にテレビで鳴り物入りの宣伝をしていた、「花畑牧場」の生キャラメルが、忘れたころになって着払いで配達されてきた。運悪く?旦那が受け取った。
「こんなに沢山注文したの?」と聞かれて、冷や汗が出た。
「うん、お友達と分けようと思ってね」と弁明したけれど、実はこの生キャラメルを注文したのにはわけがある。入院中に旦那が飴が食べたいという。食べさせたいのはやまやまだけれど、聞けば許可される自信はない。
だいたい、旦那の飴の食べ方はお行儀悪く、こっそり口に入れたつもりでも、すぐにばればれなのだ。
テレビでタレントさんが、「わあ、美味しい、口に入れたとたんに溶けちゃう」というのを聞いて、これをひそかに食べさせようと思ったのだ。
早速食べてみたら、確かに美味しいけれど、飛びあがるほどではない。
それでも、旦那は続けて3粒ほど口に入れた。確かにさっと溶けて音を立てる暇もない。
この次がいつになるかわからないけれど、確実にやってくる入院の時のために、すぐに冷凍してしまいこんだ。
タケトシ君がバッハのピアノが聴きたいというので、駅前の山野楽器で、エッシェンバッハのインヴェンションのCDを買ってきてお誕生日のお祝いにあげた。これ「のだめ」効果とか。
2日
朝まぶしいなあ、と思いながら夢の中を漂っていた。何故か井の頭線の駒場の駅にいる。改札口を出ようと思ったら、足もとが断崖絶壁。それなのに、他の人はひょいひょいと降りて行く。足がすくんでいるうちに一人取り残されてしまい、もうこれは夢なのだから起きてしまおう、と思ったとたんに、目が覚めた。
時計は8時を指して、窓から燦々と陽が差し込んでいる。久しぶりの朝日だ。隣のベッドはきちんとベッドカバーが掛けられて、旦那はとっくに起きたらしい。最近の私の日課は、目が覚めたらベッドの上で高麗人参の粉末を飲むのだ。
足の痛みはさておき、元気でいられるのはこの粉のお陰かも。
あまりの気持ちよさに、溜まっていたよごれ物を片端から洗濯機にほうりこんで、2階のベランダに出たら、桃がもうすっかり開ききっていたので、高枝ばさみを担いで、枝をおろした。
玄関に飾ったら、ぱーっと明るくなったので、思いついてもう一度鋏を伸ばし、デイホームに持っていく分を切り取った。
今日はお天気がよく皆様とても明るい表情で、歌も大きな声で歌って下さり、これって私に取って最高気分。
このところ無駄遣いをしたので、昨日、今日と、経常費は着払い以外ゼロ円にする。
レンコンをすりおろして、卵、ホウレンソウ、片栗粉でまとめて、テフロン鍋で焼いたら、これ美味。
3日
玉川税務署に確定申告にいく。いままで何回も旦那を車で連れていったけれど、いつも道端で待っていて勝手がわからないので、慣れているノリコを護衛に連れていく。その代り
二子玉でのお昼付きだ。
今日は経常費ゼロ円というわけにはいかない。高島屋のイタリアンレストランで、目いっぱい美味しいものを食べて、買いあさった大荷物をノリコにもたせ、家まで歩いて帰るという彼女と別れて、私は手ぶらで電車で日吉まで、運動に行く。
今日は気を付けてアクアエアロをやったので、膝の痛みはだいぶ軽くなった。
最近体重が1キロ増えているのはなぜかと考えて、思い当たった。
果物の食べ過ぎなのだ。
でもそう云いながら、今日も美味しい豆大福を買ってしまったなあ。
旦那は1個をナイフで切り分けて、最初は1/4、そして、さらに半分、そして結局全部食べてしまった。
このお店、2個買っても箱に入れてくれるので、つい買ってしまう。明日から断固無駄食いはやめよう。
夜になって霙が降ってきた。明日のユトリーバに降らなければいいけれどな。
息子は明日イタリアからのお客様を新潟に連れて行くと言っていた。寒いだろうけれど、雪もさぞ美しいことだろう。
4日
今日はよい具合に雪にはならなかった。
初雪には逃げられたかたちだけれど、ユトリーバのお客様にとっては幸いした。
今月は7人のお客様。いつものことながら、コーラスのスタートが30分遅れる。ついついお喋りに花が咲いてしまうのだ。
でもこれが応えられない。生活価値観の一致するお付き合いっていいな。
すこしずつ、すこしずつ急ぐ人が帰って行き、最後は4人残った人たちと、夕暮れまでしゃべりこむ。
昨日一大決心をしたのに、お客様が帰られた後のテーブルを見れば、道明寺餅と草餅が4個置き去りにされていた。
明日になったら硬くなってしまうと思うと、つい手が出て、私の決意はあえなくしぼんでしまった。
とても楽しい一日だったので、テレビはつけない。画面があまりにも醜悪な番組で埋め尽くされているので…
私はどう考えても我ながら利口ではない。でもその私だって、今の政治家たちの頭の悪さ、センスのなさにはついていけない気がする。
5日
どこまでも透明な明るい朝がきた。でもこれは束の間のプレゼントらしい。
午前中から、郵便局と2軒の銀行を梯子して、用事を済ます。出したり入れたり、移したりと我が家のお財布の忙しいこと。
ついでのことに、2軒のスーパーを回って、2日分の食料を補給する。でも帰ってから牛乳と卵が切れていることに気がついた。
午後になって、昨日ユトリーバの例会を忘れて現れなかったアツコさんが、レイコさんからのプレゼントを取りにみえる。
私にとっては、2日続きの「いい日」となった。
夕方まで遊んで行かれたアツコさんのお帰り際、駅まで一緒に行き、忘れた牛乳と卵を買ったけれど、例によって余分な荷物が増える。
思いついて買った豚バラブロックで角煮を作ったら、注意していたつもりが、出来たら脂だらけ。
脂身をこそげ落としたら、半分になってしまった。
6日
3つも重なった低気圧のせいで、冷たい雨が降る。行きたくないな、という気持ちをぐいと脇に押しのけて、体操教室に行った。
この悪天候の中、田園調布の駅でシステムの故障が起きたとかで、ダイヤが大幅に乱れている。
でも駅の暖房完備の待合室で、時計とにらめっこをしながら、本を読んでいるのも悪くない。
それにしても、待合室の椅子が硬くて、いくら暖房しているとはいえ、お尻が冷たい。
この椅子に座るたびに、クッションを寄付しようかしら、と思ってしまうけれど、これこそおせっかいだろうな。
スポーツクラブの入り口で、靴を忘れてきたことに気がついた。210円払って靴を借りる。
そもそも靴のロッカーを1ケ月1000円払いたくなくて、自前を持っていくことにしたのだけれど、1週間に1回靴を借りたとして月に840円。このほうが安いということに今になって気がついた。
今度から借りることにしようかしら。
旦那にお昼までに帰ると約束をして出たので、ジムには寄らず、今日もお風呂は一番乗りだった。
せめてもと、誰も居ないミストサウナにゆっくりと入って汗を流し、体重計に乗ったら増えた1キロは依然として戻っていない。 困ったもんだ。
食欲のない旦那は、手当たり次第に壜づめを開けておかずにする。こんなことでいいのかしら、と思いながら、私も一緒になって、イクラの醤油漬け、鯛味噌、海苔の佃煮、と変なおかずでご飯を食べた。
7日
このところお陽さまのご機嫌は1日置きに良くなる。今日は春らしい透き通った空が広がり、昨日サボった洗濯物が皆片づいた。
こんなに晴れやかな日なのに、午前中1時間の間に、二つの訃報が入った。どちらも旦那のお友達。
躊躇したけれども旦那に報告したら、一瞬絶句していて、言わなければよかったかな、と後悔した。
まさか自分より先に行くとは、というのが実感だったのだろう。
去年の暮れから、彼の大事なお友達が3人みまかられた。
旦那を見ていると、テレビで見た模型飛行機の大会で、低空飛行ながら最後まで飛んでいる風景が目に浮かんでくる。
それでも気分がいいらしく、うららかな空に誘われて、庭に出て行って、クリスマスローズが開いた、と報告があった。
私は今日やたらと眠い。家から一歩も出ず、試行錯誤していた新しい形の手提げ袋を解いたり縫い直したりで、一日が終わってしまった。
8日
おととい約束した久我山のカズコさん(私のお友達は和子さんがいっぱい)と会うために、10時に渋谷の井の頭線の改札口に行く。昨夜久しぶりにお電話を下さって、急遽会うことにしたけれど、お互いに家族に拘束されている身なので一番効率の良い午前中ということにした。弾丸のごときお互いのエールの交換も、気がつけば1時間半。
あわただしく右と左に別れて、ホワイトデーで賑わうコンコースをやっと通りぬけて、約束通り握り鮨の少々上等のものを買って12時に帰宅。
それにしてもホワイトデイって何?バレンタインのお返しのはずなのに、売り場は若いお嬢さんでいっぱいだった。
もっとも最近は男女の位置が逆転しているらしいから、それでもいいのかしら。
夕方から猛然と膝が痛くなってきて、歩行困難になりつつある。
9日
朝から歩くとどうしようもなく膝がしらが痛い。この痛みは初めての経験だ。
そもそも3か月位前に病院に行くバスの中で立とうとして捻ったのが始まり。段々に悪くなっているのは、体操と水泳のせいかしら。
朝いちで、注射をしに行くけれど、さっぱり効かない。みんなに批判の目で見られながら、午後デイホームに出かけようとしたら仕事から早く帰って来て寄って行った息子が送ってくれるという。往きだけでもラッキー!
夕方息子の家に行き、イタリアからのお客様にご挨拶。ひとりは去年も来日したジャン・ルカ氏。
もう一人は初来日のロベルト・パウリーニさん。それに日本に住み着いて30年のアルティさん。
いずれもイタリア人らしいダンディだ。私の作った「龍村」のバッグを、小さいけれど、こんなに大きいお土産は他にない、と言って下さり、とても嬉しかった。会いたかったジーノさんは、奥様の病気が悪化して来られず、残念だった。
ジーノにお土産と手紙をことづける。これは威風堂々と桜のカードに日本語で書いて、アルティさんに翻訳していただくことにした。向こうからくださったカードも、イタリア語だったんだものね、これでおあいこ。
ちなみにかつて習ったイタリア語を完全に脳内消滅させてしまっているわたし、怪しげな英語で話したら通じない。
後で聞いたら、彼らはイタリア語しかしゃべらないんだそうだ。
夜になって雨。自由が丘のお寿司屋さんに繰り出したご一行は、10時になっても帰ってこないらしい。
アルティさんが乗ってきた車が、人待ち顔で雨にそぼ濡れている。まさか彼はお酒飲んでないだろうな。
それより明日の朝9時半の帰りの飛行機に乗れるのかしら。
10日
膝の痛みがだいぶおさまったと思って、坂を下りて行ったら、途中からまたまた痛みが走り出し、人ごみの中を脚を引きずって歩く羽目になった。
只腰かけているだけなら、膝の存在感すらないのに、一歩でも足を出すと、強烈に痛い。
これは若かりしときにやった肉離れ以来のことだ。あ〜あ、これも老化現象なのかなあ。
流石に今日はプールには行かない。一日中椅子に座って、昨日作ったのと同じ袋をもう一つ作った。
食べるのを控えているつもりなのに、体重はじりじりと上昇の傾向。悩んで痩せるような可愛さがないんだわ。
今もし、一つの望みをかなえてくれるなら、この膝を正常に戻してほしい。
未練たらたらだったけれど、お昼になって、今週はプールには行かない決意を固める。
今思い出したこと、2、3日前の新聞の占いに、「一寸先は闇」って出ていたっけ。
11日
旦那が調子がよくて…というか、少々のことには驚かなくなって、少し微熱ぎみなのに家の中で結構動いている。
そこで、桃の枝を10本ほど切ってもらった。夕方になって、びっこをひきひき木畑亭にプレゼントしに行く。
お客様が現れるまでまだ1時間あるからと引きとめられて、新作のケーキとカプチーノをご馳走になり、久しぶりにマダムとおしゃべりしていたら、あっという間に1時間たってしまった。
私にとっては随分久しぶりの木畑亭だった。時計を見てあわてて立ち上がり、出来たてアツアツのパスタを頂いて外に出たら、雨が降りだしていた。
4月は区の「みんなで歌う会」の予定も入って、足が痛いなんて言ってられない気分だけど。
木畑亭でも歌う会を待っていてくださるお客様があるので、そろそろ時間を調整して、考えようかな?という方向に気持ちが動いている。深夜になってもなんだか気持がウキウキして目がパッチリ。
12日
大事を取って今日もできる限り家に籠る。おかげで新しい形のバッグの4個目が出来上がった。
今日のは紺色の塩沢お召の生地に赤い裏布で、とても華やか。誰の手に持っていただけるのかしら、と、いろいろな顔が、目に浮かぶ。我ながらおせっかい・めいわくおばさん。
それにしても、この膝の痛みのしつこいこと。もしこのままいつまでも治らなかったら、プールにも行かれない。
家の中でとにかく今真面目に心がけているのが、食べすぎないこと。
旦那は、お腹が痛い、背中が、腰が…と言いながら、せっせと間食をしている。
これについては、一切口を出さずに、食べたいというものをせっせと買ってきたり作ったりして、私っていい奥さん。
13日
今日も痛み止めを飲みながら、一歩も外に出ない。
読みかけの本の続きをおととい買いに行ったら、その巻だけが売り切れだった。
昨日娘がアマゾンに頼んでくれたそれが届いて、これは娘の助言で5冊まとめて買ったので(娘が受け取って、払ってくれ、最新刊でアマゾンでまだ買えないぶんを付けて持ってきてくれた)、これでひと安心。
このシリーズは最後の29巻まで揃ったことになる。これ今楽しんでいる佐伯泰英著の「居眠り磐音江戸草紙」。
彼が今悪い奴らをばっさばっさと峰に反した刃でやっつけてくれたら、世の中がどんなにすっきりすることだろう。
この本が今売れている理由がわかるような気がする。
ミキサーが割れてしばらく不自由していたけれど、お歳暮のセレクトギフトで見つけて、ジューサー、清見オレンジの箱詰め付きというのを頼んでおいたのが、オレンジの季節になってやっと届いた。
早速野菜でポタージュを作り、娘に分けてあげようと思ったら、「離乳食ね」と冷たいひとこと。
夜になって強風が吹き荒れる。
14日
昨夜来、地の底から吹きあげてきたかと思うような大風が吹き荒れて、朝カーテンを開いたら、昨日出しっぱなしにしていた洗濯ものの小物乾しが切なさそうに身をよじっていた。
この分では病院の外来もすいているだろうと推量して、いつもより20分遅く息子の車で旦那と一緒にでたら、思ったとおり2番目だった。
病院という所は、やっぱりよほど元気か、よほど体調の悪い人がいくところなのだ。
血液検査の結果待ちで、旦那がトイレに立った間に、診察室から呼ばれた。私が代わりに入っていくと、今日は数値が安定していて、このままで落ち着いてくれるといいんだけれどな、と先生がつぶやき、私もそうですね、と呟いた。
車の迎えが来るまでの間に、生協で3日分の食糧を調達した。
足の痛みはまだ治らない。今日ほど自堕落な生活を送った日も珍しい、と思うほど、一日中テレビをつけっぱなし椅子から一歩も動かないでいたら、却って調子が悪くなった。
でも最近のテレビって面白くない。いつもいつも同じ顔ばっかりが出てくる、と思いながら、筋書きがすっかり解ってしまった2時間ドラマなどを見ているうちに、いつの間にか1時間寝てしまう。
15日
ずっと気になっていたことがある。引出しの整理だ。これは生まれつきの性格だから、どうしようもないとは思いながらも、旦那の身辺の整理のよさを見ていると、恥ずかしくなってしまう。
入院しているときに頼まれものを良くするけれど、何段目の引出しの右から2列目なんて言われると、それがぴったりなのに恐れ入ってしまうのだ。そこで、今回かねがね気になっていた引出を開けてみたら、世界中のお金が出てきた。
一つ一つに回想を馳せる。硬貨はともかく紙幣となると、その国の貧富の差がありありと見えて、面白い。
中にピンピンのカナダドルの束が出てきたのを見て、はっと思いだした。
20年以上も前カルガリーで空港に向かう途中、ハンサムなお兄さんにスピード違反で捕まって、帰りがけで時間が押していたこともあって、郵便局に行くのが面倒でそのまま飛行機に乗って帰ってきてしまったのだ。
やましい心を抱えて、それ以来カナダの土を踏んでいないのは、ひょっとしたら空港に入ったとたんに手錠をかけられてしまうのではないか、という恐れを抱いているから。
それでも万が一を考えて、40ドルのカナダ紙幣を後生大事に抱えて20数年が過ぎてしまった。もう一度行きたいなあ。
16日
我が家にはタオルが溢れている。大体厚手のタオルは使いにくくて、つい敬遠してしまい、もっぱら旅館のぺらぺらとか、100円ショップの顔が透けそうな手合いを愛用している。
そこでこの山積みの厚手の奴でトイレのタオルを作り換えることにした。今使っているのがだいぶはげちょろけなので、気になっていた折のことでもある。
一枚の浴用タオルを8等分して同寸を24枚。バイアスはバザーで買ってきたまま何年も放りっぱなしにしていた、つるんつるんの化繊布を苦労してカット。今日一日で取り敢えず2枚が出来た。
明日からの楽しみが増えた。今日はデーホームで殆んどハチャメチャどんちゃん騒ぎをして歌ってきたので、夜になって声がハスキーだ。
17日
足の痛みが治まらないので、今日もプールには行かない。でもストレスがたまってきたので、発散すべくミワコさんをヨコハマ高島屋に引っ張り出した。おととい出来たバッグを持っていく。
探究心旺盛な彼女のことだから、きっと作るだろうな、と思って一枚分を急遽裁断してそれも持っていく。
横浜駅はアジア系の外人さんがいっぱい。そのほとんどが中国人らしかった。スイカをチャージしようとして、パス入れを足元に落とした。トントンと肩を叩かれて、足元を指差したのは、どうやら中国人のおにいさんだ。にっこりと笑った顔が、素敵な人だったなあ。
日本が好きになって帰ってくれたらうれしい。
こんなに観光客が多いのは、景気がいいのかしら。人の波の中を足を引きずりながら、私はかなり世間様のご迷惑な存在だったと思う。
なにしろ、向こうからくる人が避けられないのだから。
夜になってお風呂上りに体重を測ったら、また400グラムの増加だ。ああ、どうしよう。
18日
昨日から黄砂が飛んでいるという。空はきれいに晴れているけれど、大義名分がまかり通ったので、掃除洗濯一切を棚上げにする。
午後になってお寺に地代を払いに行こうと思っていたら、娘が一緒に行ってくれるといい、車で送ってくれた。ラッキー!
髪が伸びてそっくり返り、足はビッコでは、我ながら見る影もない。“あだちが原のおばば”って、こういう姿なんだろうな、と思うと気が滅入る。
春が近づいて街は賑わっているけれど、お洒落の手抜きをしたおばばが街を歩いたら、この土地の名誉にかかわってしまうから、街も歩かないことにした。
二子玉川まで歩きにいくという娘に、晩のおかずの買い物を頼んだら一向に帰ってこず、そこらへんのものをかき集めて食事にしたら、あらかた食べ終わったところに、鯵の干物とおからを買って、息を切らしてやってきた。
今日は気温が高く、久しぶりでエアコンのスイッチをオフにした。間もなく一番いい季節の到来だわ。
さてと、この足どうすんべか。
19日
このところの運動不足で体が重い。そのうえ、リビングのテーブルは一番大きいサイズにしてあるというのに、私のものでいっぱいの状態。足が痛くなると、手が健康状態を保っている幸せをしみじみと感じられる。
だから思い切り散らかったテーブルの上から、布きれを拾い集めて、チクチクと針を動かしているだけで、“なんて幸せ!”と思ってしまう。我ながら能天気だなあ。
今日も買い物に出なかったので、明日あたりは食材が払底しそうな雰囲気。
私一人だったらあと一週間ぐらいは、生き延びられそうだけれど、目下の状態では、毎日旦那のために目先の変わったものを食卓に並べる必要があり、どうしても冷蔵庫が余り物で溢れてしまう。
だから私は残り物を片付けるために、せっせと食べてまたもや太りそうな気配が濃厚。
夜になって、東北の出張から帰ってきた息子が、「お土産」といってどら焼きとゆべしを持ってきた。
折角お菓子を食べない決意を固めたのになあ。どら焼きは冷凍庫に直行。ゆべしって冷凍出来るのかしら。
20日
もうお彼岸になってしまった。早いなあ。まだなんにもしていないのに、もう1年の1/4が行ってしまった。
でも去年の5月以来、旦那がまるまる家で過ごせたのは、1月だけだったので、これで3月が無事に過ぎたら、うれしい月となる。それにしてもこの数日の私ときたら、夜寝るときになって、今日はなにをしたっけ、と考えると、なんにも実になることをやっていない。
お皿を一枚割ったことが唯一のニュースだったりするのだ。
今日も一歩も外に出ず、お風呂に3回入った。お風呂で本を読むのって最高の至福の時。
あとはせっせと針を動かして、トイレのタオル作り。だんだんと積み重なっていく新しいバイアスでお化粧されたタオルの山が高くなっていくのを見ているのも結構楽しいもんだ。
21日
やっと活動的な…といったって、私は座っているだけの、小平のお墓参りの日。今回は娘夫婦に連れて行ってもらう。
昨日の朝の雨のせいか、3連休の2日目の今日は、劇的な道路の混みようだった。
朝8時半に出たのに着いたのが10時半、今日は伸びた金木犀の枝をおろし、新しい砂利を入れて、見違えるようになった。
ご先祖様に“お父さんをまだ呼ばないで下さいね”とお願いする。
今回はご近所様の中で一番乗り。これで気が済んだ。それにしてもどの道を通っても大混雑なのは、お天気が良くなった連休だからかしら、上りも下りも混んでいて皆どこに行くのかしら。獲物を探して右往左往する蟻みたい。
途中でお昼を食べて、あとはせっせと走って、帰ったら4時半だった。つくづく思ったこと、ひとの運転する車に乗るのって楽ちん。それでもどったりと疲れた。
22日
天気予報どおり午後から雨。気温がぐっと下がって肌寒さを覚える。
朝9時から東京マラソンの放送を見た。36000人の人が走る光景は壮観だけれど、多すぎてなんだか面白味に欠ける。
でもこれは東京の大きなお祭りだから、走っている風景をみているとだんだんとエキサイトしてくる。 木畑亭のお嬢さんのマキちゃんが走ると言っていたけれど、完走したかな?
午後になって思いだしてマチコさんにご無沙汰お詫びのメールを打ったけれど、いつもすぐ来る返事が来ない。
何時間か経って今東京マラソンのボランティアで浅草橋にいる、と返事が来た。
そういえばそんなこと言ってたっけ。やることがないので、せっせと針を動かしたり、本を抱えて何度もお風呂にはいったりと、結構楽しい一日だった。
旦那は今日調子が悪そう。早々と引き揚げて行った。とても気になるけれど、声をかけず黙って見ていることにした。
23日
前々からリクエストがあったのに、そのままになっていた「出船」「この道」「美しき天然」の3曲の歌詞をやっとプリントした。少し早めにデイホームに行って、人数分の複写をする。
この頃デイホームでは、マージャンや囲碁が流行っているらしく、コーラスが始まってもなかなか皆が揃わない。
でもこれが結構楽しそうで、そちらの仲間に入れてほしいと思ってしまう。
今日は新しい歌をたくさん入れたせいか、コーラスは低調だった。
帰りがけに来月の区のコーラスの打ち合わせをしていつもより30分遅く帰ったら、旦那が早いね、という。
私の行動パターンについては、何にも覚えてないんだな。
痛い足を奮励叱咤して小走りに帰ったのにぃ〜。
それにしても今朝の膝の注射は全然効き目がない。
漢方の入浴剤を入れたお風呂に3回も入った。このほうが効き目がある。
庭に出ていた旦那が入ってきて、お隣の奥さまが先月亡くなられたそうだ、という。それも旦那と同じご病気で歳も旦那と同い年。よく庭掃除をしていて植木の交換をやっていた何十年来のお付き合いだったのに、まったく知らなかった。
この頃はご近所付き合いが薄くなって、お世話になった方とのお別れもままならない社会となってしまったのが、さみしい。
一番ショックを受けたのは旦那だった。考えたけれどご挨拶はあちらの気持ちを考えて遠慮することにした。
24日
本当ならプールに行く日なのだけれど、昨日整形の先生に、しばらくは運動を控えたほうがいい、といわれたので、残念ながら当分行かないことになりそう。
今日は一日中WBCの決勝戦に釘付け。勝負事が苦手な私は、負けそうになるとみていられなくなって、体に悪いことこの上ない。
でも今日ははじめから最後までしっかりと見届けた。見事世界一の栄冠を勝ち取った彼らの強靭な精神力に、拍手を送りたくなる。活気がなくなりつつあるニッポンに新鮮な空気が注ぎ込まれて、これで元気になればいいけど。
私ときたら、美容院に行くのをさぼって、鏡を見るのもおぞましい姿。
流石に見ていられなくなって、カレンダーを繰ったら、もう1ケ月のご無沙汰だった。慌てて予約を入れる。
25日
桜が満開になってまたまた花冷えの日が続いている。
でも私この季節がなんとなく好き。
お彼岸が過ぎて本格的に暖かくなると、あっという間にあの灼熱地獄の夏が手ぐすね引いて、という感じでやってくるので、暑さにとことん弱い私としては、この辺でちょっとたたらを踏んで躊躇してくれるのも、情けのような気がする。
つらつら考えるに、このところの足の痛みも、去年の夏の旦那の2か月に及ぶ入院に、一日も欠かさず病院通いをした“つけ”のような気がする。
若い時から30年間頑張って泳いできたから大丈夫という慢心を、神様にこの辺でブレーキをね、と諫められたのかも。それにしてもこの痛みは何だ、なんだ。
今日はだいぶいいから買い物に、と思って出かけると、帰りには悪くないほうの左足が、腰からつま先までパンパンになって大荷物の上に足を引きずってやっとのことで帰ってくるはめになる。
その反動か、旦那は何となく元気で、玄関先の君子蘭の鉢を庭に運んだりしている。
この手で彼を元気にさせちゃおうかしら。それにしても、食べるものがないなあ。
26日
寒い朝が訪れて、身が引き締まる。木曜のゴミの収集は早く来るので、うかうかしてはいられない。昨夜寝られなかったこともあって、目が覚めたら時計の針は8時半を指している。
あわてて下に降りて行ったら、もうゴミは旦那が捨ててくれてあった。
午前中は例によって陸にあがった“とど状態”でまったく使い物にならない。午後になって久しぶりに美容院に行った。
鏡の前に座って、思わず目をつぶる。我ながら完全に女を失っているのだ。
ちょっとして目を開けたら、窓の外に白いものが舞っている。北の空は青いのに、頭上だけが怪しの黒雲に覆われて、束の間の雪だった。
少し曇っていたので、念のために傘を持って出てよかった…と思ったけれど、この雲はまたまたあっという間に消えうせて、お陽様が顔をだした。
変わり身の早さに戸惑ってしまう。
昨日小学校の同窓会から今年度の会費の督促状が来た。出してなかったのかな?
印刷で来たところを見ると、かなりの数を出しているのだろう。
でもこれってあり?と思いながら、気の弱いワタクシ、帰りに郵便局に行って振り込みを済ませた。
ちなみに旦那のところには、地元の小学校から最近、
“
今年から名誉会員として会費は免除”と言ってきた。
私の出身校は私立なので、経営が大変なのかも。
27日
今日も寒い朝を迎える。でも空に一点の陰りも見えないので、寝起きがいい。
新聞のチラシを見ていたら、今日はお寿司の美味しそうなのがたくさん出ている。そこで早速旦那から注文を取る。
旦那は穴子と鯵が食べたいというので、銀行に行く用事を兼ねて、久々に街に降りて行った。
遊歩道の桜はまだ3分咲きといったところだけれど、人出が多くて、華やいだ雰囲気がいい。
毎年思うことなのだけれど、遊歩道の桜並木にピンクの提灯を下げるのは、やめてくれないかしら。
一年中でいちばん街が生き生きとするこの季節に、商店街が主催する桜まつりなるものが開催されるのだけれど、このところの暖冬続きで、いつも開花とこのフェスティバルがタイミングがずれていた。
今年はどうやら花とお祭りがフィットすると思われるだけに、この提灯ぶらぶら風景は見たくない。今なら間に合うのにな。 意地悪おばさんになって、進言しようかしら。
28日
相変わらず寒い日。花冷えなどと風流なことも言っていられなくなる。
しまおうと思っていたジャケットをもう一度引っぱり出し、洗うつもりで洗濯機の前に置いてあったセーターを着る。
朝旦那の病院について行った。このところ平熱続きで、なんとなく元気なのは、私たちにとっては喜ぶべきことだけれど、主治医はこんな筈じゃない、というような顔で、首をかしげている。
旦那は自己判断で抗がん剤の服用を止めてしまった。先生は「お任せします、自己判断でやってください」、となんだか立場が逆転している。「そのかわり何かが起きたら、すぐに病院に来て下さい」との条件付きだ。
でも体の中がどうなっているのかは判らないけれど、出来る限り入院せずに済む方向に向くことを祈っている。
旦那は体重が2キロ近く増えた。最近の食欲を見ていて、当然の結果だと思う。
午後からミシンを引っ張り出して、ミノに頼まれた袋を縫う。
午後になってミノ・ヨーコ夫妻が来訪。旦那はこのところ体調がよくて、軽い庭仕事から上がってきて、一緒に夕暮れまでお喋りに興じていた。
ヨーコおばちゃんが私の作ったバックを何個か持って行ってくれて、嬉しかった。
また新しい材料を見つけて作ることにしよう。足の痛みが少し和らいでいる。でも自重、自重。
31日
とうとう3月も最後の日になってしまった。年度末というのは、リタイアしてからはそう切実な感じではないけれど、それでも郵便局や銀行のATMの行列を見ていると、ああ、あしたから本当の意味での新しい生活が始まるのだと実感する。
学校に勤めていた頃は、毎年新しい出会いがあって、気の合うクラスを持つと本当に嬉しかったものだ。だいたい音楽というのは、芸術科目の選択で、書道、美術はそれなりに得意とする生徒が集まるけれど、音楽はいわばあとの二つからはみ出した生徒が集まってくるので、大変だったなあ、と今にして思う。
それでも懐かしい楽しい思い出がいっぱい。
朝新聞を取りに出たらお隣の若奥様と出会った。お互いに寝起きの素顔でお母様のお悔やみを言う。
やっとお話が聞けたので、昼前にお悔やみに伺って、気が済んだ。
でも痛い膝で30分座っていたら、今日の足は最悪。1回の買い物で当分出ないようにしようと思うので、今日も山のような荷物を引っ張って帰ってきた。
今月の嬉しかったこと。この部屋のカウントが1万を超えた。実は1万を区切りにと思っていたのだけれど、もう少し頑張ってみる気になった。
こんな馬鹿げた日記を見てくださっている方々に心からの感謝の花束を!